「やりがい」の行方

近年、働き方改革やリモートワークの普及などを背景に、自身の働き方や働くことの意味を見直す人が増えています。

自分らしさを大切にしながら、やりがいのある仕事を求める声も高まっていますが、私たちは、どのような時に「やりがい」を感じるのでしょうか。

心理学者のエドワード・デシとリチャード・ライアンが提唱する自己決定理論では、「自律性、有能感、関係性の3つの基本的欲求が満たされるときに、人はやりがいや幸福感を感じる」とされています。

物流や製造の現場で働く方々にとっても、この考え方は身近に感じられるのではないでしょうか。

私たちの製品は、機械化や自動化が急速に進む現代において、なお人の関わりが欠かせない “人の手による作業” の領域をサポートするものです。

確かに自動化・無人化により、効率性や生産性は大幅に向上しました。

しかし、「機械に対して物を運ぶように指示・操作する作業」と「自身の身体を使って直接ものを運ぶ作業」では、作業者が感じるやりがいや達成感に違いがあるのではないでしょうか。

“人の手による作業” には、機械操作では得られない(自律性、有能感、関係性につながる)独特の充実感があると思うのです。


企業が事業活動を行う上で効率化を追求することは、エネルギー資源や労務費といったコスト管理の他、品質向上、安全性確保など様々な観点において重要な課題と言えます。

一方で、働き手の「やりがい」という面ではどうでしょうか。

自動処理の制御操作を行う事に比べ、自分の目で確認して、手で触れ、身体を使って丁寧に取り組む作業は「職場に貢献している」「誰かの役に立っている」という実感をもたらし、自身の仕事の成果を通してやりがいを感じる事につながる‥‥と考えられないでしょうか。

そうして得られるやりがいや達成感、物事に貢献しているという充実感は、働く人に幸福感をもたらします。

日々の仕事の成果を数字だけで判断するのであれば、定量的な要件を満たしていれば充分かもしれません。

しかし、私たちは仕事を評価する時、結果として満たされた品質や機能といった要件だけでなく、「職人がひとつひとつ丹精を込めて作り上げた」といった背景やストーリーにも価値を見出します。

私たちは、作り手が製品に込めた想いやあたたかさを心で受け取る事ができるからです。

この「人の手がもたらす価値」は、物流の作業においても同様に存在すると考えます。

「ものを運ぶ」という作業は、しばしば機械化・自動化の対象として扱われがちです。

しかし、その作業に使命感と想いを込め、「自らの手で次工程に貢献する」という意識で取り組むとき、そこには達成感や充実感、感謝、信頼といった、機械では生み出す事のできない付加価値が生まれます。

効率性の追求は重要ですが、それと同時に、作業に携わる人がやりがいを実感できる環境を維持することもまた重要な課題のひとつと言えるのではないでしょうか。

私たちは、物を運ぶ人が誇りを持って仕事に取り組めるよう、心に寄り添った製品を提供することで、効率とやりがいを両立できる職場づくりに貢献し続けたいと考えています。


寄稿日:2025年10月
この記事を書いた人:
株式会社をくだ屋技研
総務部 部長
出水 明/Demizu Akira
(「やりがい」の行方)

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