「“常に”社会に貢献する企業でありたい。 それには、チーム一丸で運営していくことが大切です。」──株式会社をくだ屋技研(OPK)

スペシャルインタビュー/“常に”社会に貢献する企業でありたい。

—をくだ屋技研のビジョンとは?
目指すところは、「常に社会に貢献する企業でありたい」ということ。ポイントは「常に」です。これだけ変化する世の中にあって、いつでも社会の中で役に立つことができる存在として挑戦ができているかということ。長期的、永続的にです。この思いは創業者の時代から続く信条だと感じています。

—そのビジョンを具体的に実現していく方法とは?
私が常務だった時代にさかのぼりますが、外部から半年間研修にこられていた方のメールがきっかけで、5年後にどういった企業でありたいかという「中期経営計画」を提案したことが始まりです。その重要性を内外から学ぶ機会があったことから提案し、「WAKE UP」と名付けました。その由来は大きく2つ。「中期経営計画」への我々らしいタイトルを模索したとき、もし創業者が存命であれば、どんな言葉をかけただろうと想像したんです。きっと「Wake Up!」「立ち上がれ!」とか、そんな叱咤激励をくれるんじゃないかなと。
もう一つは、をくだ屋技研の会社理念“和は人格を形成し、研究は会社発展の基礎である”からです。「和」(WA)と「研究」(KENKYU)、この2語の頭2文字を組み合わせると「WAKE」となるでしょう。

—社員へもその思いは浸透している?
売り上げや利益、使う材質などを盛り込んだ5カ年の指数を具体的に挙げた内容でしたが、経営陣や外部コンサルタントと作ったもので、WAKE UP 68と名づけました。ですが、あまり社内への意識として浸透するものではありませんでしたね。次なる69〜73期への「WAKE UP 73」を作るにあたっては、(より現場に近い)部長や次長が中心となって作成しました。

—次期「WAKE UP 73」を立てて、何か気付いたことは?
会社のあるべき姿に対して、自分たちの現在地を知る大切さですね。どうありたいか、そのためには今どうすればいいのかという逆算。一方で、常に世の中は動いているため、どこかで軌道修正をしないといけないんですが。広く、俯瞰した視線が必要になりますね。特に、“鳥の目、虫の目、魚の目”という言葉がしっくり感じます。

—どういう意味でしょうか。
“鳥の目”というのは、空の上から見ることができる=全体を俯瞰して見る力のこと。“虫の目”というのは、地に足をつけた視点=リアルな現状を見る力のこと。“魚の目”というのは、川を時間の流れに見立てて=過去から未来を見据える力のことを言うそうです。「中期経営計画」はこの3つの視点がないと作れません。

—さまざまな立場、さまざまな考えの人々からの意見が必要だと。
例えば、カリスマ的な経営者が一人で未来を考えていく会社もあるでしょう。でも、をくだ屋技研はやはり組織で、みんなで運営していくことが大切です。この会社にはカリスマ経営者はいらないと思いますね。

■をくだ屋技研の挑戦と戦略、
そして強みとはライフワークバランスを大切にしながら、
2030年以降のあり方を見据え、未来を守る企業に。

—これから挑戦したいことや戦略はありますか?
この数年間進めているのは、いかなる環境の中でも役に立つ製品づくりです。その上で、『大阪・関西万博』には3つの視点から製品を寄付しました。1)大阪のものづくり業として役に立ちたい、2)自分達が作った製品が、万博の現場でお役に立っている事を体感し共に盛り上がりたい、そして3つめですが、実は、万博への寄付は簡単なことではないんです。会社として環境には配慮しているのか、環境対応製品なのか…そういった諸条件を踏まえての資料提出や面談を経てようやく寄付がかなうんです。その選定をする万博チームは、基本的には日本のグローバルな企業からの出向者で構成されており、彼らは万博開催後、各自の会社に戻ることになる。そういった流れを踏まえると、万博で示されたセレクトへの考え方が、今後の世の中の中心的な考え方になると言っても大袈裟ではないですよね。寄付をすることで、その考え方に触れられることも大きなメリットでした。

—そうした戦略を通じて気付いたことはありますか?
SDGsやESG(企業が長期的に成長するために欠かせない環境や社会問題への配慮、企業統治体制の整備を目指す経営方針)について、世界的な流れとしてこれらが経営方針に入っていなくてはいけない。特にESGについては、やっていない企業は銀行からの融資が受けられないほどです。SDGsについては、2030年までに達成される世界共通の目標なので、私たちとしては、その先である2030年以降に求められることを、今から考えなきゃいけません。

—具体的には?
カーボンニュートラル(地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を全体としてゼロにした状態)への取り組みですね。をくだ屋技研が手掛ける製品は「油圧式運搬機器」ですが、それをどんなエネルギーを用いてどんな素材でつくるのか、何を動かすのか、というところまで問われます。今後の企業経営は、ここまで考えていかないといけないんです。

—解決方法は?
私たちがいくつか実現できた一つは、太陽光発電によって電力を補うことです。本社新工場では、PPA(電力購入契約)を導入して約6%発電しているのですが、電力会社から再生可能エネルギーを使った電力を供給してもらっています。それにより、工場で使用する電気は全て再生可能エネルギーでまかなうことができ、環境に配慮した製造につながります。現在の地球環境について国連は、地球温暖化どころか“地球沸騰化”と表現しています。あと数℃でも地球の温度が上がったら、人間の力ではどうすることもできないような環境になってしまう。その影響を受けるのは私たちの子どもたち、あるいは孫たちの世代です。それを避けるべく、企業一社一社ができるベストを尽くしていかないといけない。それが、私たちが目指す大きなビジョンとしての未来ですね。

「パステルシリーズ」のような環境に適したものづくりはをくだ屋技研の当然の役割だと思っています。

—環境に配慮した運搬機器「パステルシリーズ」はそういった観点から開発されたのでしょうか。
「パステルシリーズ」は従来の作動油に代わり、海洋汚染の低減とCO2削減に寄与する「水系制御液」を採用しました。それにより、今までの製品は使えなかったお客さまにも届けることができる。そういった選択肢を提案できる組織こそが企業のあり方かなと。「パステルシリーズ」のような環境に適したものづくりは、をくだ屋技研の当然の役割だと思って今取り組んでいます。

—他には?
アフターメンテナンスにも力を入れ、壊れる“前”に察知できるよう準備しています。壊れてから修理となると、修理期間は(をくだ屋技研のハンドパレットで行っていた)運搬作業をどうするのかという問題になります。ここについても、私たちの責任と考えており、そうならないために部品の寿命や修理タイミングを提案するアラートをお出しできるように、個体管理のソフトウェアを準備しています。

—そういった挑戦や戦略を続けられる、をくだ屋技研の強みはどんなことだと考えますか?
社員一人一人の仕事に対しての向き合い方です。自分の仕事に強い責任感があるメンバーばかりです。

次回、奥田社長スペシャルインタビューVol.2
■をくだ屋技研の社内イノベーション
独創的な社内プロジェクトを任せることで
行きたい先へ進む力がある…そんなスタッフを育む環境に。


取材日:2025年4月
インタビュー協力:
株式会社をくだ屋技研
代表取締役社長 奥田 智

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